「…きっと、男としてっていうのは、佐渡くんのことを後輩として見ていたらいけないんだろうね」
ももさんの言葉は、抱いた期待をそっと砕かれたかのように感じた。
自分の伝えたいことと、相手が望んでいることが正反対なことは分かっていたが、今言わないとこのまま終わってしまう。
そんな衝動に駆られて、話し始めた。
「最初にももさんに話しかけた、“あのとき”は、正直迷惑だと思ってました」
“あのとき”というワードに、バツが悪そうに口を結ぶ。
「面倒なことは嫌いなので、さっさと指摘して終わればいいかなと。別に興味もないですし」
そう。マドンナと呼ばれる先輩の下着が透けていようと、平凡を望む俺には迷惑の一言に尽きる事柄で、それ以上の何かを感じたりも期待も全部なかった。
「ただ、さっき見てしまったときは正直…」
ここまでは勢いで話せたが、ここから先はいくら気が急いでいても、ありのままを口にしてはいけないように本能で感じた。
生まれて数回目くらいに頭の中を高速回転させてなんとかオブラートに伝えようと試みる。
「…それで、呆れさせたんだね。本当に嫌な思いをさせてごめんなさい」
言い淀む姿に見かねたももさんが、あまりの見当違いの答えを出したせいで、普段全く起動しない回路のスイッチがそこで切れた。
ある意味というか別の意味で普段の自分に戻ってしまい、言えずにいた正解を赤裸々に告げた。
「っ、違くてっ!…正直、もっと見たいなってのと、誰にも見られたくないなっていうので頭がいっぱいになりました」



