―あの夢のような時間から、数日が経った。
ももさんとの距離が縮まったのかもという淡い気持ちを抱きながらも、以前のようには声をかけられないもどかしい日々が続いていた。
「佐渡、こないだ教えたアプリいれてくれたー?」
「…何の話?」
こいつはいつも呑気そうという視線を遠慮なく真島に向けながら、全く頭も働かせずに聞き返す。
ちなみにバイト終わりなのでこいつのテンションは2割増し、俺のテンションは4割減。
今までバイトが終わっても特に何も感じていなかったが、最近はどことなく寂しさを感じる。
勿論、今日も話せなかったと心のプチ反省会を開くからだが…。
「えーっ、もうこの話3回目なんだけど!」
真島と話していると、毎回彼女かよという突っ込みが心の中で生まれる。
が、大して恋愛の素養もないくせになぜそんな突っ込みが思い浮かぶのかとここにきて真剣に考えてしまいそうになる。
「…何、その全く興味ありませんみたいな目は。しかも考え事してるし」
さほど表情を変えたつもりはなかったが、何故か言い当てられた驚きで、真島の拗ねた顔を凝視した。
「…俺、そんな分かりやすい顔してた?」
「いや、いつも無表情。でも最近なんとなく分かるようになってきたわ」
「その無表情っぽい顔やめろ。俺の真似だろそれ」
「で?何を考え事してたわけ?」



