長尾さん、見えてますよ








「…あ、」







厨房に入ってすぐに、食洗機の前で作業しているももさんを見つけて立ち止まる。






これは丁度良いタイミングだ。






シンクに汚れた食器を浸して、そのついでに、声を掛ければ何も不自然ではないだろう。






何せ今、ももさんの前でいつも通りの俺で振る舞えるのか分からない。






トレーを持つ手に少しだけ力が入る。






柄にもない自分に最近はもう、はっきりとショックを受けるくらいだから、意識的に体も心も弛緩させてから足を進めた。







「ももさん」







手はず通り食器を浸して、気を散らすように細かなゴミをシンク下のゴミ箱に捨てながら声を掛けた。







「はい」






「店長が、休憩入るよう言ってました」






「分かりました。…佐渡くんも、この時間からでしたよね?」






「あ、はい」






「分かりました。今浸した食器は私のと一緒に食洗機かけるので、お先どうぞ」






「…分かりました。ありがとうございます」







一通り会話が終わり、軽く会釈して手元のトレーを定位置に戻してから事務所に向かった。