Tageliet──永遠の秘薬──

 いくら呼びかけようとも、一向に姿を現さない城の主。それに痺れを切らしたライナーは、無駄だとばかりにため息一つ落としイザベラの手を引く。

「行こう」と踵を返す彼に、イザベラは抵抗した。「彼」ならきっと応えてくれると。そこには何の根拠もなかったが、クラウスは信ずるに値する人物だとライナーの手を振り払ったその時、やっと聞こえたのだ。上の階から「何の用だ?」と静かに問う声が。その美しい響きは、無音の冷たい空間にまるで華を添えるよう広がった。

 見上げた視線の先にいたのは、美しきヴァンパイアと彼女に殺意を向けたあの青年の姿。

 まだ記憶に新しい彼の狂気に、恐怖を拭い去ることはそう容易くない。いくら未遂に終わったと言えど、殺されかければ相手にいい印象など抱けなくて当然だ。気まずくなるのも当たり前で、あからさまに視線を逸らすイザベラにヴィクトールも気まずそうに目を伏せていた。

「お前たち、鬱陶しい」

 そう隣に視線を向けることなく告げるクラウスに、ヴィクトールは「うるさい」と反論する。