Tageliet──永遠の秘薬──

 腹の底から沸き上がるのは、久々に感じる怒り。思わず突きつけていた剣を大きく振り上げていた。柄を強く握りしめ、そのまま勢いで振り下ろしそうになったその時────遠くで自分の名を呼ぶ声に我に返る。

「クラウス! 盗まれたものは取り返したか?」

「こいつの馬が持ってった」

「え? あー⋯⋯そう。⋯⋯⋯⋯で、そいつはどうする?」

「⋯⋯⋯⋯知らん」

 吐き捨てるように呟き兵士から目を逸らすと、クラウスはその場から離れる。無言のまま突き進む彼に、置き去りのままの兵士をヴィクトールは思わず振り返っていた。

「いいのか?」

「盗まれたものは戻ってこないだろう。あいつを殺したところで⋯⋯状況は何も変わらない」

 相も変わらず淡々と語る彼に、ヴィクトールは「そうか」としか言えなかった。

 クラウスがそう言うのなら、そうなのだろう⋯⋯と。

 ヴィクトールは今一度、背後を振り返る。そこにはもう兵士の姿はなかった。