Tageliet──永遠の秘薬──

 揺れる暖炉の炎をじっと見つめながら、青年は冷えきった体を温めている。振り払った雪の粒が温められ溶け行く様を見て、脳裏に焼き付く惨劇も、この胸に沈めた感情も全て、蒸発してしまったこの結晶のように消えてなくなればいいのに⋯⋯と、握りしめた拳に力を込めた。

 小さな灯火は心を温め命をくれる、しかし大きすぎる炎は間違えばその全てを奪い去ってしまうのだ。

 青年は何かを振り払うよう頭を大きく左右に振り、その短髪をわしゃわしゃとかきむしった。

 静寂の中、暖炉にくべられた薪がパチパチと小さな音を鳴らす。それ以外物音のしないこの広い空間で、どこか不安を抱えながらも、彼は不思議と心地よさを感じていた。

 人ひとりが眠るには少し大きすぎるベッド。真っ白なシーツの波にその体を横たえて、静かに眠っているのは一人の女性。その意識はまだ深い夢の淵をさ迷っており、未だ目覚める気配はなかった。