それに────なぜだか分からないが、その時ばかりはそこから立ち去ってはならない気がしていたのだ。ただ単に体力の限界もあったが、青年にはある根拠のない小さな期待がその首を擡げ始めていたから。
「頼むよ⋯⋯長居はしない」
青年は必死に懇願する。その間にも姿なき城の主は何一つ言葉を発しなかった。
そして短い沈黙の後、ほんの少しの隙間が再び大きな軋みを響かせゆっくりと、そして大きく開かれる。青年はどんな化け物が出てくるのだろうと、少し身構えていた。
完全に開かれた扉の向こう、そこに立つその人物を目に映したと同時に彼は言葉を失う
三本の蝋燭が揺らめく燭台を右手に持ち、こちらを鋭く見つめるその姿。瞳は吸い込まれそうなほどに美しいアクアグリーンを湛え、腰まである長い髪は銀色に揺れていた。
整いすぎた顔立ちに、思わず息をのむ。
きっとこの世のどんな美をもってしても、彼の美しさは越えられない⋯⋯それほどに人を魅了させる容姿をしていたのだ。
男としてみょうな敗北感さえ感じてしまう彼の外見に、自分もそこそこだと思っていた青年は完敗だと心密かに笑う。
目の前に立つ絶世の美貌を湛えたその人物は、ただ一言、「入れ」とだけ呟き道を開けた。
薄暗いエントランスの先────その目の前の階段の踊り場で、古びた大きな柱時計の鐘が午前零時を告げていた。
「頼むよ⋯⋯長居はしない」
青年は必死に懇願する。その間にも姿なき城の主は何一つ言葉を発しなかった。
そして短い沈黙の後、ほんの少しの隙間が再び大きな軋みを響かせゆっくりと、そして大きく開かれる。青年はどんな化け物が出てくるのだろうと、少し身構えていた。
完全に開かれた扉の向こう、そこに立つその人物を目に映したと同時に彼は言葉を失う
三本の蝋燭が揺らめく燭台を右手に持ち、こちらを鋭く見つめるその姿。瞳は吸い込まれそうなほどに美しいアクアグリーンを湛え、腰まである長い髪は銀色に揺れていた。
整いすぎた顔立ちに、思わず息をのむ。
きっとこの世のどんな美をもってしても、彼の美しさは越えられない⋯⋯それほどに人を魅了させる容姿をしていたのだ。
男としてみょうな敗北感さえ感じてしまう彼の外見に、自分もそこそこだと思っていた青年は完敗だと心密かに笑う。
目の前に立つ絶世の美貌を湛えたその人物は、ただ一言、「入れ」とだけ呟き道を開けた。
薄暗いエントランスの先────その目の前の階段の踊り場で、古びた大きな柱時計の鐘が午前零時を告げていた。
