Tageliet──永遠の秘薬──

「そんなに悲しい顔をするな。あれは、俺がクリスティーナに渡した俺自身のものだ。俺たち一族のことを彼女に知って欲しくて⋯⋯何でもいいから、彼女との繋がりが欲しくて⋯⋯。だから、我が父にも内緒で俺がクリスティーナにあげたもの。今現在、それが国王の元にあるというのなら、あの『誓いの書』は厳密に言えば、そなた自身が所有すべき歴史の書なのだ」

 自身の不安が杞憂に終わったことを知り安堵した彼女だったが、思わぬクラウスの言葉にその安堵感を越える喜びを感じていた。彼女自身が持っているべきものだというその言葉は、イザベラ自身の心に深く刻まれたのだ。

「あれは、あなたとクリスティーナの『誓いの書』⋯⋯あなたたち二人の強い絆だったのね」

「あぁ、そうだ」

 クリスティーナ・シュタインフェルトは、一体どんな思いであの古書を眺めていたのだろう? きっと、クラウスとの明るい未来を夢見ていたに違いない。『人間』と『ヴァンパイア』という種族を越えた絆を信じ、ともすれば二人がその架け橋になれていたかもしれないのに。

 それを、人間の浅はかで醜い欲望が断ち切ってしまった────。

 しかも、その戦犯は自身の血筋。

 やりきれなさでいっぱいだった。