「赤峰に告白されたのは本当だ。でも、OKしたってのは嘘だ。断ったよ、オレには好きなコがいるからって」



「……へ?」



 誰よそれ!

 突然の怒りの感情に、思考がついていっていない。




「……お前だよ。月子。オレが好きなのは」



「…………へ?」



「満月が綺麗な夜に、お前とキスしたいって決めてたんだ」

 ……優一が、わたしのこと……好き?

 ……へ?


「オレにとって、月子との出会いは地球に隕石ぶつかって月ができたのとおんなじくらい重大な出来事だったって思ってたからな。そんで、キスしたくて、嘘ついた」



 今のわたしの顔は、どんな顔になっているんだろう?


 恥ずかしくて見れやしない。
 めちゃくちゃ変な顔になっているに違いない。


 でもそんな顔のわたしに、優一は再び自分の顔を近づけてくる。



「え……ええっ?」



「月子、好きだ」


 また、優一のやわらかい唇がわたしのくちびるに重ねられた。



「んんっ……」



 今度はとびきり優しいキスだった。



 身体が、ふわふわしてきた。



 ……もう、一体なんなのよ!





 満月は、人を狂わせる。



 涼しい夜風が、火照った身体には気持ちいい。



「……あんたって、ホントわけわかんない」



「オレがわけわかんないのは昔からよく知ってるだろ?」



「……まあね」



 そう。
 満月がわたしを狂わせたのだ。




 だけどこんな心地いい狂気になら、浸ってもいいかななどと思いはじめていた。