「班行動、どうしてた?」


 わたしを呼び出した優一がそうたずねたので「う~ん、買い物とか、船に乗ったりとか、塔にのぼったりとかしてたよ。別に、普通」と答えた。


「そっか。オレは“もしも月がなかったら”ってやつを見てきたよ。けっこう面白かったぜ。月がなかったら、地球の1日って8時間だったんだって」


「ふうん、そうなの?」


 突然、何を話し出すんだ、こいつは。


「そうなってたら、季節もなかったらしいし、人類も生まれなかったんだって」


 優一はそれだけ云うと、急にしばらく黙り込んだ。




 秋の夜風がひんやりして、少し肌寒い。


 今夜はまんまるの黄色い満月が空に浮かんでいた。



「……で、なに? こんな夜中に呼び出したりして。あんまり長くなると、里美とか勘ぐるからさ」


 わたしはわざと不機嫌そうにせかした。



 ……ホントは、認めたくないけどドキドキしてた。



 修学旅行の夜に、こんな綺麗な海の見える場所に呼び出されたりなんかしたら、例え相手がガキンチョの頃から知っている幼なじみの優一だとしても、胸が高鳴ってしまうのもしょうがないじゃないか。


 ……いや、優一だとしても、というのは実は正しくない。
“優一だから”、ドキドキしてるんだ。