メガネを外したその先に

「なくならねぇだろ」


期待していた言葉なんて、返ってこない。


「お前は俺の元教え子で、その事実は変わらない」

「そういうこと、言ってるんじゃなくて…」

「とにかく、無くしたら危ないから財布はしまえ」


半ば強制的に先生がこのやりとりを終わらせようとしてきて、渋々お財布を鞄に戻す。


「最初からそれでいい」


そう言った先生が、私の頭をポンと撫でた。


「…え?」