メガネを外したその先に

人通りが全くない道ではない。


でも、私が酔っていることも相まって、手を差し伸べてくれる人はいない。

周囲にも見放され、何だか目の前の状況が全てどうでもよく思える。


しつこすぎる男性に半ば諦め半分になっていた時、聞き覚えのある声が初めて私の名前を呼んだ。


(のぞみ)


腕を引かれ、さっきまで振り解けなかった男の手が簡単に離れていく。


「何やってたんだ」


頭上から響いた龍弥先生の声と目の前にある先生の胸に、相変わらず格好良すぎて狡いと思った。