メガネを外したその先に

「真面目だね、先生は」


涙を堪えて口角を上げてみたけれど、果たして上手く笑えていただろうか。


「折角上手くできたのになぁ」


昨夜、何度も味見をしたおかきを鞄に戻す。

空気が重たくならないように明るい声を出してみたけれど、微かに声は震えていたと思う。


それに多分先生は気付いていたけれど、敢えて触れてくることはなかった。


それが、先生なりの優しさで。

決して越えられない、先生と生徒の関係性なのだ。