メガネを外したその先に

私が職員室まで来ると、今では当たり前のように空き教室に向かう龍弥先生。

その行動に、私は他の子たちより少しは特別なのではないかと自惚れてしまう。


「どこ?」


夕暮れの教室で向かい合い、テキストを開いて聞きたかった箇所を指差す。


指差しだけで私の質問な意図を悟った先生が、手にしていたシャーペンを私のテキストに滑らせて。

聞き慣れた低音ボイスを響かせながら、わかりやすく丁寧に説明を施してくれる。


何十回と繰り返してきたこの光景の分だけ、私と先生の繋がりは深いものになったと思い込んでいた。