メガネを外したその先に

こんな時にも、瞼の裏に浮かぶのは龍弥先生の顔で自分が嫌になる。


ゆっくりと、優しく触れ合う唇。

一瞬だけ触れて離れていった先輩の顔色を伺うと、街灯に照らされて真っ赤に染まる顔が見えた。


初めてのキスにイマイチ実感が湧かないまま、先輩と別れて自分の部屋でそっと唇に手を伸ばす。


先程の光景を思い出しても、心が動かない。

でも、瞼の裏に浮かんだ龍弥先生の顔を思い出すと、涙が頬を伝う。


叶わない恋だとわかりきっていても、やっぱり私の心が動くのは龍弥先生だけ。

それを改めて思い知らされて、先輩への罪悪感が渦を巻いて仕方なかった。