メガネを外したその先に

「ご注文はお決まりですか?」


お決まりの台詞を口にしただけなのに、妙な緊張が走るのは龍弥先生のせいよりほかはない。


「ホットコーヒー2つ」


女性にメニューを確認することなく注文をした龍弥先生に、彼女との関係性を勘繰ってしまう。

目の前に置かれている会計トレイ上で現金を受け渡しするものの、お店の決まりで直接手渡しできない距離が酷くもどかしい。


「ごゆっくりどうぞ」


溢さないように細心の注意を払いながら、コーヒーを2つトレイに乗せて龍弥先生へ渡す。