メガネを外したその先に

こうやって私の挑発に乗せられてポロリと口を滑らせてしまう先生は、少し可愛い。


「ふーん、いないんだ」


ニヤケる口元を押さえながらそう呟くと、先生がやってしまったと言わんばかりに表情を顰めた。


「質問終わったなら帰れ」

「うん、もう帰りますよ」


本当は、許されるならもう少し、先生と他愛もない雑談をしていたかったけれども。

これ以上は先生に鬱陶しがられそうだったので、今日は潔く引き下がることにした。


テキストを抱えながら、今だけは私が独り占めできている先生の後ろ姿を脳裏に焼き付ける。