メガネを外したその先に

「あぁ、これは…」


私の手元からシャーペンを奪い取った先生が、私のテキストの中に線を引く。

先生の書いた印と自分のメモが入り混じるこのテキストは、日に日に思い入れが強くなる。


先生の説明には、いつも無駄がない。

でも、私が理解できるまでとことん付き合ってくれる先生は見掛けによらず優しい。


「ありがとうございます、よくわかりました」


今日の質問が解決した瞬間は、すっきりすると同時に先生との時間の終わりを察して寂しさも込み上げてきてしまう。


夕暮れ時の教室。

先生の横顔も、どこか憂いを帯びて見えた。