メガネを外したその先に

「どこがわかんない?」


いつもは多数の生徒を映し出している瞳が、今は私にだけ向けられている。

今日の授業範囲を開くと、私の手元を覗き込んできた先生と物理的な距離が縮まった。


ふわりと漂う香水の香り。

端正な顔立ちに見惚れそうになりながら、平然を装って口を開く。


「ここのthis wayはどこを指すんですか?」


先生に馬鹿な子だとは思われなくて、いつも絶妙な質問をできるように必死で頭を回転させている。

お陰様で前回の小テストもミスは一問だけで、自分でも驚くくらい英語の実力が伸びてきているから恋の力は偉大だ。