メガネを外したその先に

「長谷川だって、彼氏の一人や二人いるだろ」

「彼氏なんて、いない」


長谷川の返事に、少しだけ自惚れる。

一線を越えることは決してないと思っているのに、まだ彼女の気持ちが俺に向いていることを心のどこかで嬉しいと思ってしまう自分がいる。


先に進む気はないのに、好意自体は嬉しいと思う。

あまりにも自分勝手でどうしようもない自分の心に、理性で必死に蓋をしようとする。


「おやすみ」


やっぱり、会っては駄目だ。

そう思って突き放したはずなのに、再会をきっかけにあっという間に彼女のペースに飲み込まれた。