メガネを外したその先に

「せんせ、」


テキパキと仕事をこなしていた姿とは打って変わり、ほろ酔いで舌足らずな口調も初めて耳にした。


「今日、なんの日かわかる?」


変わりゆくものが多い中で、変わらないものもある。

毎年聞かされていたその質問の答えを知っているのに、素直に答えられないのは教師と元教え子という壁があるからだ。


「わたし、はたちになったよ」


…知ってる。

彼女の言葉に、長谷川もまた卒業式の日の言葉を覚えていたのだと思うと胸が熱くなった。