メガネを外したその先に




真っ直ぐ家に帰る気にもなれず、一人で酒を飲み歩いたが酔うに酔えない。

高校時代の長谷川と今の長谷川が順番に脳裏を過り、止まっていた時が動き出す。


キリの良いところで酒を止め、駅へ向かって歩いていると縺れる男女の姿が目に止まった。

ふらつく足取りに、栗色の長い髪から横顔が覗く。


「希」


明らかに目の前の男に絡まれていて迷惑そうにしている彼女を、わざと下の名前で呼ぶ。

細い腕を掴み引き寄せると、いとも簡単に俺の胸に倒れ込んできた華奢な身体を妙に意識してしまう。