メガネを外したその先に

先生の写真一枚も、私にとっては宝物だ。


オランウータンに挑発されてムッとした先生の横顔も、ゾウを見上げて“デカ”と呟く先生の無愛想な声も。

母親の後ろをぴょんぴょん飛ぶカンガルーの子供を見てフッと溢した先生の笑顔も、オオカミと意思疎通したようにジッと目を合わす先生の瞳も。


全部忘れたくなくて、必死に脳裏に焼き付ける。


夢みたいな一日は、あっという間に過ぎていく。

陽が傾くのが寂しくて、今日の朝に時間を戻したいと切に願いながら先生の名前を呼ぶ。


「龍弥先生」


メガネ越しではない、龍弥先生の瞳を真っ直ぐ見つめて言葉を紡ぐ。