メガネを外したその先に

自分のクラスのシフトまで時間があるので、ブレザーのポケットから取り出した単語帳を眺めていると、目の前に影が落ちた。


「こんな日まで勉強か」


顔を上げなくてもわかる、龍弥先生だ。

私の誕生日は何度聞いても覚えられない癖に、毎年文化祭の日に私がここにいることは覚えているらしい。


「先生はまたサボり?」


勝手に私の隣に腰を下ろした先生に問う。


「サボりじゃなく休憩」


先生は部活や委員会の顧問、校内の見回りなどもあって忙しいはずなのに毎年同じ答えが返ってくる。