メガネを外したその先に

「もう、帰る?」

「片付けたらな」


片付けなんていいよって言わなければいけないと思うのに、もう少し側にいて欲しくて口を結んでしまう。


洗い物をしてくれる先生の背中を見つめる。

今更ながらに、私の部屋に龍弥先生がいること自体歪で違和感が半端ない。


テーブルも綺麗に片付けてくれて、先生が帰る時間が近付いてくる。


「そろそろ帰るから、鍵だけ閉められるか?」


これ以上我儘なんて言えるはずもなく、静かに頷く。