「家茂様、必ず生きて帰って下さいね?」


「あぁ。約束だ」


そうして出かけた家茂さまは
私との約束を果たすことはなかった。


元々病弱だった家茂さまは向かっている途中、

衝心性脚気で亡くなったのだ。


そんな、まさかこんなことになるなんて…


こんなことなら今まで家茂様を避けたりなんて
しなければよかった。


もっと早く話し合えてれば...


いくら考えても溢れ出るのは涙と後悔ばかり。


それから一年後。

家茂様含め徳川家が守り続いていた江戸幕府は
ついに倒幕し、

そこからさらに10年後に、私は息を引き取った。


そんな私の31年間の人生の中で一番幸せだったのは家茂様と過ごした数日間だった。