その日から私は、 体にいい食事を作ってもらって食べたり、 和歌山城の庭を散歩をしたり、 お腹の中の赤子に話しかけながら過ごした。 そしてとうとう十ヶ月が経とうとした頃。 「痛っ…!」 吉宗様とお話をしていた時に急に陣痛が来た。 「理子様頑張ってください!」 周りにいる侍女や、 近くで待機させられていた医者が 手伝ってくれながら、 何時間もかけて頑張った。 「生まれました!」 「…」 医者の叫び声と共に 本来なら聞こえてくるはずの産声が聞こえない。 そして誰も何も言わない。