「相手は豊臣五代老の
徳川家康の三男・秀忠殿です。
悪い話ではないと思うわ」
姉上は私が遮る言葉も気にせず続ける。
「それでも、ごめんなさい姉上。
私はまだ秀次様のことを思っております。
なのでこの縁談は破棄に…
「お願い、江…!
あなたにしかできないことなの。
江が徳川に嫁いでくれれば
秀頼も定子も安心して生活できるわ。
でも、江を犠牲にしたいわけでもなくって…」
「茶々、落ち着け」
「「「淀様!」」」
姉上の元に数人の侍女が駆け寄ってくる。
姉上は過去の二度の落城の記憶を持っているので、
命に関わる話になると
こうして過呼吸になってしまうことがある。



