私は学校に行けない。

行きたくないんじゃなくて行けない。

私だって行きたい。

学校でみんなと喋るのは楽しいし、私には恵まれた友達もいる。

なのに行けない。

「お母さん、お腹痛い」

「ええ?またなの?」

そんな会話を繰り返しながら私は思う。

私は不登校なんじゃないか。

「いじめられているわけじゃないのね?お腹が痛いってどういうふうに?病院行く?」

最初は心配してくれたお母さんもお父さんもお兄ちゃんも今ではまたかとため息をつく始末だ。

「ええ、まだ行けないみたいで……すいません。佳奈ちゃんにありがとうって言ってあげてください」

お母さんの声をぼんやり右から左へと聞き流しながらテレビで天気を確認する。

今日は晴れらしい。

学校に行けないということはそんなに悪いことなのだろうか。

世の中には何人も何人も学校に行けない人がいて私もその中の一人だ。

ただお母さんが行きなさいというから行く。

それだけのこと。

『学校に行くのは勇気がいるよね。でもね、これだけは言える。みんな絵梨ちゃんのことを待ってるよ』

お父さんに無理やり連れて行かれたスクールカウンセリングの人に言われたことがある。

嘘だ。

不登校の私をなってる人なんているわけない。

学校からのプリントを届けてくれる佳奈ちゃんも優衣ちゃんも先生に言われてプリントを持ってくる、ただの義務みたいな感じなのではないかと無駄に心配して、不登校になってから一回も顔を合わせていない。

学校の授業も結構進んでいるだろう。

どうせ居場所なんてないだろう。

誰も私のことを待っていないだろう。

そんな先入観で私は昨日も今日も明日も明後日も学校を休んだ。