「ハァハァハァハァ」

 文句を言いたいが、呼吸が乱れ言葉が出ない状態だ。

「ハァハァハァハァ」

「ハァハァ、あっ霞さんお久しぶりです、ハァハァ、帰ってきていたのですね」

 その発言に呆れていた。
 帰国時の空港でそれなりに取材を受けたのに、あなたの会社だって来ていたはずよね。

 しかも気付いていたのにそのセリフでは、何を話していいかわからないじゃない。
 訂正することもめんどくさくなった私は、彼の下手くそな演技に合わせることにした。

「ハァハァ、久しぶりー先々月に帰ってきて、そうだ、芝端(シバハタ)君だよね、取材?」

「えっ、えー、終わって帰るところです」

「ふーん、デザイン関係かな?」

「いえ、あの、その、そう今日は別の取材で、そうそう、最近ヤングの間で奇妙な話で盛り上がっているんですよ」

「へー奇妙な話ねー。ちょっと気になるじゃない」

 誤魔化されたかのように言葉を返すと、彼は安心したように胸をなで下ろしている。
 口元が緩み目を閉じて軽く咳払いをした。

「エヘン。それがですねー。なんでも子供が一人で遊んでいると派手ないでたちをしたおばさん妖怪が近づいて来て、その子の頭をみるみる白髪頭にさせちゃう話があるんですよ」

 どうやら先ほどのことなど忘れているようで、とても自信ありげに説明し始めた。
 しかもその内容は、若者の中でもかなり幼い子供向けの話をされたことに驚いていた。