先生には悪いけど仕事のことは断ろう。
 もう一度アート作品を作成して頑張ってみよう。
 正には諦めてもれえ……ないだろうなー。

 あっーうじうじしても、しょうがないじゃない。

 自分の気持ちに格闘しながらも歩いていると、妙に軽快であることに不自然さを覚える。
 振っていた手の平を見つめ考えると、いつの間にか歩く速度は弱まりその場で立ち止まっていた。
 
 あ、拾った植物、会社に置いてきちゃった。

 何をするにもスムーズに進まない自分に呆れてしまう。
 今から戻っても先生も帰宅していると思うし、お断りの返事をするにも電話ではなく、もう一度足をはこばなければいけないのか。


 うなだれながら立ち尽くしていると私の気をまぎらわしたのは、風に乗ったほのかに甘い香りだった。


 あれ、何かいい匂いがする、なんだっけこのホテルのトイレみたいな上品な匂い。
 そうだ、ジャスミンだわ。
 その香りを探すように後ろを振り返ると、日没の眩しい夕日がベンチの処に人影を作っている。


 私は気になり、目を細め確認していた。
 そこには昨日見かけた、制服の少女が腰をかけている。
 
 あっ、彼女だ。あの子もこの場所によく来るのかしら?

 再び出会い改めて考えてしまう、理由もわからない昨日の出来事。
 雨の降る中植物を拾い上げ、しかも涙を流していたことを考えると彼女にとってあの状況は何を意味していたのだろうか? 
 
 そしてこの時間にベンチに一人座る彼女にも、不可解に思えていた。