一瞬、私の中で時間がゆっくり流れると、今の自分を見詰めてしまう。
 周りを見ると、他のレーンでも声援を送るものいれば、結果に喜び手を叩くものもいる。
 皆が笑顔で、ゲームを楽しんでいるのがわかる。

 蘭のはしゃぐ声に、先生も安否の表情で見つめていた。

 そんなことを考えている私だって。

 再び時間が動き出したかのような感覚を覚えると、ある提案を持ちかけていた。

「どうせゲームするなら何かかけたいわね」

 その言葉に守君は考え答えた。

「一番になった人だけ、トイレ掃除を軽減できるというのはどうですか」

 蘭と目が合うと、ゆっくり頷いていた。
 私達は会社のトイレ掃除を順番で行っている。特に嫌な訳でもないが、ゲームの罰としては面白いと感じた。

「じゃあ、一番の人は今まで通り一回、負けた二人が連続二回トイレ掃除にしようか」 

 トイレ掃除をかけた戦いは、私の点数が二人からかけ離れビリは確定していた。
 最終ゲームでは、守君と蘭の戦いになっている。
 座りながら二人の喜ぶ姿を見て、自分が負けているにもかかわらず、穏やかな気持ちになっていた。

 気が付くと、数か月前の悩みは解決はしていないにもかかわらず、不思議なことに気持ち的に少し薄らいでいる。
 現在もまた違う悩みを抱え、それもいずれ人生の一部分にしかならないのかもしれない。

「次、京子さんの番ですよー」
 
 楽しんでも、落ち込んでも、お洒落しても、しなくても。一日一日と時間は過ぎ去ってしまう。
 私は同じように時間を経過させるなら、明日につながるこれからの楽しみを見つけようと考えていた。
 
 カバンから顔を覗かせる、ヒトデのペンを見つめると、こんな言葉を伝えていた。

 貴方はこの時間を気づかせるため、足早にデッサンしたんでしょ?

 そんな冗談を心の中で呟くと、私はボーリングを再開した。