その日から数日が経過したころ、出勤した私の元に、蘭は嬉しそうに走りよってきた。
「京子さん、少しつぼみが実りましたよ」
私達は窓際に駆け寄り、植物を眺めていた。
つぼみはまだ小さく、茎の先から放射状に数個、実らせている。
「やっぱりペンタスですよ、白い花を咲かせる」
「そうかー、やっと、咲きはじめたかー」
「あと一つあれば願い事が叶えられますね」
「そうだね」
「水あげている途中だった」
「待って……私が水あげるね」
手に入った嬉しさのあまり、この日、四六時中ペンタスを眺めていた。
今まで植物を観察した経験は無かったが、蕾は時間がたつごとに、成長始めていることに気付いた。
葉も手を広げるように伸ばし、ペンタスは開花しようと頑張っているようだ。
その日の夕方、茜にこのことを伝えたく水路横のベンチに向かっていた。
夏も終わり、日の暮れるのも少ずつ早くなっていく。
先日まで青空が見えていたこの時間帯も、今は目に映る全てをオレンジ色に、そして夜の訪れを早めていた。
ベンチに座り数分した頃、この日も茜は突然のように現れた。
いつにない彼女の表情から、大事な話が有ることを予感してしまう。
青白い肌の色は、緊張からなるものだろうか?
震える口元から出た言葉は、名前を呼ぶことも、挨拶もするわけでも無く、その要件だけが伝えられた。
「実は私、引っ越すことになってしまい、今日はお別れを言いに来ました」
聞きたく無かった内容に、頭の中が真っ白になると、私はベンチから立ち上がっていた。
「えっ、なんで? ご両親の仕事関係……」
とっさに出たありきたりの言葉は、私達に沈黙を与えていた。
次の言葉が見つからないでいたが、その事実は私にとって重要で有ることを認識し始めさせた。
「京子さん、少しつぼみが実りましたよ」
私達は窓際に駆け寄り、植物を眺めていた。
つぼみはまだ小さく、茎の先から放射状に数個、実らせている。
「やっぱりペンタスですよ、白い花を咲かせる」
「そうかー、やっと、咲きはじめたかー」
「あと一つあれば願い事が叶えられますね」
「そうだね」
「水あげている途中だった」
「待って……私が水あげるね」
手に入った嬉しさのあまり、この日、四六時中ペンタスを眺めていた。
今まで植物を観察した経験は無かったが、蕾は時間がたつごとに、成長始めていることに気付いた。
葉も手を広げるように伸ばし、ペンタスは開花しようと頑張っているようだ。
その日の夕方、茜にこのことを伝えたく水路横のベンチに向かっていた。
夏も終わり、日の暮れるのも少ずつ早くなっていく。
先日まで青空が見えていたこの時間帯も、今は目に映る全てをオレンジ色に、そして夜の訪れを早めていた。
ベンチに座り数分した頃、この日も茜は突然のように現れた。
いつにない彼女の表情から、大事な話が有ることを予感してしまう。
青白い肌の色は、緊張からなるものだろうか?
震える口元から出た言葉は、名前を呼ぶことも、挨拶もするわけでも無く、その要件だけが伝えられた。
「実は私、引っ越すことになってしまい、今日はお別れを言いに来ました」
聞きたく無かった内容に、頭の中が真っ白になると、私はベンチから立ち上がっていた。
「えっ、なんで? ご両親の仕事関係……」
とっさに出たありきたりの言葉は、私達に沈黙を与えていた。
次の言葉が見つからないでいたが、その事実は私にとって重要で有ることを認識し始めさせた。



