物知りの先生だからひょっとして。
期待を膨らませた私たちは、先生のことを注目していた。
不思議がる表情を浮かべ静かに近づくと、間髪入れずにたづねていた。
「先生、私が拾ってきた植物なんですけど、なんて名前かわかりますか」
手に持つ植物を手渡すように見せると、私達は目を合わせ、先生の回答を緊張気味に待っている。
先生は蘭から植物を受け取ると、目を凝らすように眺めていた。
「うーんごめんなさい。葉っぱの形からではわからないわね、何て名の植物かしら」
先生が言葉を止めると、蘭は同意を求めるかのように、また記憶を思い出す切っ掛けはないものかと、植物を指先で軽く触り説明し始めた。
「ペンタスって花、ご存じですか? 今私達の間で流行っていて、その花に葉の形とか生え方が似ているのですが」
「あら、ペンタス? 名前はなんとなく聞いたことがあるわね。そうなの。若者の間で人気があるの」
「はい、二つそろえるとお願い事を叶えてくれると言われているんです」
「まあ、素敵な話ね。でもこれがその花だとしても不思議ねー。枯れてもいないのに、ここにきて数カ月、全然変化もないし」
先生と蘭の会話を聞きながら、自分の中で思い出すことがあった。
蘭の言うペンタスが、二つそろえて願い事を叶えることを考えると、茜が拾った植物と、ここに有るものを合わせ二つそろう。
どうしてあの場に捨てられるかのように有ったのか理由はわからないが、もし植物にも意志が有るとしたら、捨てられたことにおびえ、開花させることを拒んでいるのだろうか?
そんな不思議なことを当たり前のように、考えてしまっていた。
先生はそっと窓際に植物を置くと、私に何かを伝えたかったかのように、意識していた。
「そういえば、京子ちゃんが子供の頃も、今のように植物を大事にしていたわよね」
「えっ、私がですか?」
「そうよ、旦那(ウチの)と一緒に、隣の空き地に……」
先生の言葉を聞いても、その時の記憶は、少しも頭の中で思い出すことはできないでいた。
「全然覚えていないです。隣の空き地に植えていたのですか?」
先生は優しいながらも、少し困った表情で答えてくれた。
「印象に残っているのは、その時は植えたのではなく、枯れてしまった植物を埋めていたのよ」
先生の話に、自分自身が驚いていた。
「なんで植物を埋めていたんでしょ」
「事情は思い出せないけど、あなたは昔から優しかったから。守なら覚えているのじゃないかしら?」
蘭は気を使うかのように、優しい表情で給湯室に入って行く。
「お茶を……入れてきます」
枯れた植物に関する記憶もなく、自分らしくもないそのような行動を、何故したのか見当もつかなかった。
守君にすぐにでも理由を聞きたかったが、彼はこの日、外出先から会社に戻る事はなかった。
後日そのことを守君に尋ねたが、残念ながら彼もその話を覚えていないらしい。
ただ彼もペンタスという名前に、どこか懐かしさを覚えるようだった。
期待を膨らませた私たちは、先生のことを注目していた。
不思議がる表情を浮かべ静かに近づくと、間髪入れずにたづねていた。
「先生、私が拾ってきた植物なんですけど、なんて名前かわかりますか」
手に持つ植物を手渡すように見せると、私達は目を合わせ、先生の回答を緊張気味に待っている。
先生は蘭から植物を受け取ると、目を凝らすように眺めていた。
「うーんごめんなさい。葉っぱの形からではわからないわね、何て名の植物かしら」
先生が言葉を止めると、蘭は同意を求めるかのように、また記憶を思い出す切っ掛けはないものかと、植物を指先で軽く触り説明し始めた。
「ペンタスって花、ご存じですか? 今私達の間で流行っていて、その花に葉の形とか生え方が似ているのですが」
「あら、ペンタス? 名前はなんとなく聞いたことがあるわね。そうなの。若者の間で人気があるの」
「はい、二つそろえるとお願い事を叶えてくれると言われているんです」
「まあ、素敵な話ね。でもこれがその花だとしても不思議ねー。枯れてもいないのに、ここにきて数カ月、全然変化もないし」
先生と蘭の会話を聞きながら、自分の中で思い出すことがあった。
蘭の言うペンタスが、二つそろえて願い事を叶えることを考えると、茜が拾った植物と、ここに有るものを合わせ二つそろう。
どうしてあの場に捨てられるかのように有ったのか理由はわからないが、もし植物にも意志が有るとしたら、捨てられたことにおびえ、開花させることを拒んでいるのだろうか?
そんな不思議なことを当たり前のように、考えてしまっていた。
先生はそっと窓際に植物を置くと、私に何かを伝えたかったかのように、意識していた。
「そういえば、京子ちゃんが子供の頃も、今のように植物を大事にしていたわよね」
「えっ、私がですか?」
「そうよ、旦那(ウチの)と一緒に、隣の空き地に……」
先生の言葉を聞いても、その時の記憶は、少しも頭の中で思い出すことはできないでいた。
「全然覚えていないです。隣の空き地に植えていたのですか?」
先生は優しいながらも、少し困った表情で答えてくれた。
「印象に残っているのは、その時は植えたのではなく、枯れてしまった植物を埋めていたのよ」
先生の話に、自分自身が驚いていた。
「なんで植物を埋めていたんでしょ」
「事情は思い出せないけど、あなたは昔から優しかったから。守なら覚えているのじゃないかしら?」
蘭は気を使うかのように、優しい表情で給湯室に入って行く。
「お茶を……入れてきます」
枯れた植物に関する記憶もなく、自分らしくもないそのような行動を、何故したのか見当もつかなかった。
守君にすぐにでも理由を聞きたかったが、彼はこの日、外出先から会社に戻る事はなかった。
後日そのことを守君に尋ねたが、残念ながら彼もその話を覚えていないらしい。
ただ彼もペンタスという名前に、どこか懐かしさを覚えるようだった。



