「あのね。」

サトミは、答えない彼に話しかける。


「背中、かっこよかったよ。

 ケンジさんにかける声、やさしかったよ。

 私、いつも元気もらってたんだ。


 でね。

 いつか、話せるときがきたらいいな、て思ってた。


 卒業式で声もかけられなかったくせに。

 背中を見ることしかできなかったくせに。

 声を聞くことしかできなかったくせに。」