東京の私鉄沿線の大学に合格したサトミは、アパートを探していた。

一緒に上京した両親と一緒に、不動産屋が案内するアパートをいくつか見て回っている。


でもどれもたいした違いがなく、サトミはどの部屋にするか決めかねていた。


「いい加減、どれかに決めたらどうだ。」

やや短気な父親が、少しいらだったようにそう言った。


「まあまあ。4年間住むんだから、迷うのもしょうがないでしょ。」

温和な母親がそう言うと、父親はやや不満そうに口を閉じた。


何件目であろう。


サトミは、無機質な壁のアパートにひきつけられた。