サトミが入学する前の、あのグランドの話。

新鮮だった。


「弟は、素質など何にもなかったんです。」

「え・・・?」


サトミは思わずそう問い返した。


あの逞しい大きな背中。

自信に満ちていたあの優しく厳しい言葉。


実力がない・・・?


「結局あいつは、私が在籍した半年間、球拾いのままでした。」

サトミは知らなかった彼の過去に、ぐっと耳を傾けた。