「あ、あなたは・・・。」

サトミの視界に入ったその男性は、驚いたようにそうつぶやいた。

男性は月光を背中にしているため、その表情は全く読み取れない。


「隣に座ってもよろしいですか。」

男性の問いかけに、サトミがゆっくりと頷いた。


サトミは隣に座る男性の横顔をじっと見つめた。

その目じりのやさしそうなシワには、見覚えがある。


「兄です、彼の。」

男性は、放心したように前を向いたまま、ぽつりとそう言った。