そこは応急処置室のようであった。


堅いベッドの上に横たわる「それ」は、真っ白な包帯で体中を巻かれていた。

唯一まかれていない閉じられた両目は、残念ながら優しいしわが刻まれていた。


「駅員から、カバンの手帳から両親に連絡が取れたと電話がありましたので、ご安心ください。」

医師はベッドの傍らに悲しそうな表情で立ってそう言うと、その目を覗き込んだ。


「どうして命を粗末にするのでしょうね。僕みたいな命を救う立場の人間からすると、ものすごく寂しい気持ちになります。」

みなぎっている雰囲気は30代くらいであろうか、力なく立つその姿が胸を打つ。


医師は、サトミのほうに向き直った。

「駅員から聞きました。あなたのような方がいるのに、どうしてこのようなことをするのか・・・。」


サトミは、呆然と立ち尽くすしかなかった。

変わり果てたその姿に、身動き一つ出来なかった。