サトミは、ホームのベンチから立ち上がった。

湿気のこもった空気に、額に汗をじっとり浮かべながらサトミは辺りを見回した。


しかししばらくすると、軽く肩を落とし再びベンチに座り込んだ。

そして小さくため息をついて、ゆらゆらと目の前を行き交う人の群れをぼんやりと見つめる。


あんなにも光り輝いていた日常が、いつのまにか白黒の音のない世界になっていた。

その無彩色の世界で過ごすことに、いつの日か慣れきっていた。



サトミはぐっと写真を見つめた。



その初めて見る、優しそうな笑顔。

想像していた通り、心があったかくなる。