声援に沸くスタンドの端っこで、サトミは最後の夏を見送った。


悔しさをじっとこらえながら、うつ向いて歩く投手へ優しい声をかける背中を、サトミは坂の上から見守った。

真っ暗になった練習場のホームベースの前で、ぐっと座りこむ後ろ姿を、サトミは遠くから見つめた。


そんな背中を見ても。


離れた場所から、想うしかできなかった。

青い日々が交わることはなかった。


すぐにでも駆け寄りたかったのに。

頑張ったね、てほめたかったのに。


でも、サトミはそれでよかった。

その背中を見るだけで、強くなれた。



そのときは、そう思っていた。