サトミは、あの最後の夏に向かって頑張っている二人の姿をただ見ていたかった。


速いボールを、真っ正面から受ける背中が大好きだった。

投手を時には叱り、時には優しい言葉をかけるその背中が大好きだった。


目立たないところで頑張るその姿。

みんなに背中を向けたまま一生懸命頑張るその姿。


前に回って舞台の主人公にしてしまうのが、とても申し分けなく感じられた。

出すぎたことに感じられた。



確かな生命の鼓動が熱い風から伝わる高校二年の夏に、サトミはじめての恋をした。

灰色だと思っていた季節は、パステル色の季節だった。