翌日の昼過ぎ。
約束の時間に牧村さんの家に行くと、玄関前の開けた敷地内で、小学生の女の子が一人でバドミントンをして遊んでいた。
「お兄ちゃん居ないよー」
「え、マジ?」
玄関の呼び鈴に人差し指を向けた瞬間、牧村さんの妹に教えられ、俺は呼び鈴を押すのを辞めた。
「今日約束してたんだけどなあ、どこ行ったか分かる?」
「わかんない。タイジュが来たら部屋に上がっててって言ってた」
「あ、タイジュ俺。
勝手に入るの怖いから妹ちゃんついて来てよ」
「やだ。バドミントンしよ」
「ラケットもう1個あるの?」
「ある」
さすがに先輩の部屋に一人で居るのも気まずい為、俺は牧村さんが帰って来るまで妹ちゃんのバドミントンに付き合う事にした。
「タイジュうまーい、むかつくー」
「左手でやってやんよ、お姫様」
この街最強の不良の妹は、それはそれは天使の様に愛らしい少女だった。
「あ、ヘタクソ」
「ゴメーン、タイジュ」
天使ちゃんはシャトルを変な所へ飛ばし、玄関脇に停めてある牧村さんのKHの前に落ちた。
「カッケーなあ」
シャトルを拾い、しばし牧村さんの単車を見つめていると、妹ちゃんが駈け寄って来て単車を指差した。
「ケッチー」
「おっ、よく知ってるな」
「フミエもこれ乗るのー」
「いやいや‥さすがに500はムリがあるって。
半分くらいのにしときな」
「半分?」
「というか、可愛い子は不良になっちゃダメなんだよ」
「キャハハハッ、ならないよー」



