単車を走らせてからしばらく経つと、ふいに忍が話しかけてきた。
「オレ別に、やり直したいとか思ってねえぞ」
「‥‥忍、お前、いつから聞いてた?」
「いや、その辺りから」
「タイミング良いと思ったんだよなあ、出て来た時‥‥」
普通に喋れている様で、少し緊張している。
「俺が大樹の立場だったら、やっぱ自分のせいだって思っちまうだろうけどさ、
そもそもお前、俺の事を見くびりすぎじゃね?」
「どのあたりが?」
「野球なんて所詮、俺にとって1000個ある可能性の1つに過ぎないし、たった1つ潰したくらいで、俺の将来を勝手に操作した気になられてもな。
そもそも実際は潰してもねえし。リハビリ投げ出したのは俺だから」
「‥スゲーな、西岡忍。
あんな才能があと999個もあんのかよ」
「おう、なめんなよ」
言葉を重ねれば重ねれるだけ、こいつからは俺に対する優しさと気遣いばっか溢れてくる。
少し前なら、それが苦しく感じていたのに、なぜか今は少し、心地良く感じる。
「なら、他にどんな才能あんの?」
「ジゴロとか。オレ顔良いし」
「‥お前、ともしびの初代ナンパしたろ。
マミさんには手を出すなよ」
「分かってるって、そんな事。
中1の春から」
「‥‥‥‥」



