90'sシリーズ/外伝








パンツを貰うべく、私は彼女に連れられタクシーに乗せられた。







「イーストハーレムまで」


「OK」







車が走り出すと、彼女はタバコに火をつけながら私に質問してきた。








「名前、なんていうの?」


『…エレナ』







この女の目的はわかってる。

私に世話をやき、良い人だと思われたいんだ。








「私はメイファン。

生まれは中国で、ニューヨーク育ち。この前までリオに居たけど、日本に住んでいた事もあった」


『…ふうん』








同じスラム出身という事を建前に、初対面の私に偽善の優しさを見せ、恩を売るつもりだ。








「知ってる?日本人はみんな、ドラえもんを観て大人になるから、入浴後はどら焼きを食べる習慣があるの」


『………』


「ファーストネームよりファミリーネームを前に突き出す国だからさ、個の主張は押さえ気味で、家柄や組織に自分を通すのが苦手な人種なんだよね」


『…ふうん』








ベラベラとよく喋るのは、私が暗いせいじゃない。

おそらくこの女は、もとからこんな感じなのだろう。







「ヘイ、ミスター。日本じゃタクシーが遠回りしたら裁判になるよ」


「この国の教訓と洗礼だよ」


「いやいや、観光客じゃないし」