パンツを貰うべく、私は彼女に連れられタクシーに乗せられた。
「イーストハーレムまで」
「OK」
車が走り出すと、彼女はタバコに火をつけながら私に質問してきた。
「名前、なんていうの?」
『…エレナ』
この女の目的はわかってる。
私に世話をやき、良い人だと思われたいんだ。
「私はメイファン。
生まれは中国で、ニューヨーク育ち。この前までリオに居たけど、日本に住んでいた事もあった」
『…ふうん』
同じスラム出身という事を建前に、初対面の私に偽善の優しさを見せ、恩を売るつもりだ。
「知ってる?日本人はみんな、ドラえもんを観て大人になるから、入浴後はどら焼きを食べる習慣があるの」
『………』
「ファーストネームよりファミリーネームを前に突き出す国だからさ、個の主張は押さえ気味で、家柄や組織に自分を通すのが苦手な人種なんだよね」
『…ふうん』
ベラベラとよく喋るのは、私が暗いせいじゃない。
おそらくこの女は、もとからこんな感じなのだろう。
「ヘイ、ミスター。日本じゃタクシーが遠回りしたら裁判になるよ」
「この国の教訓と洗礼だよ」
「いやいや、観光客じゃないし」



