「紗智」
そして、今目の前にいる彼が、
誰なのかは分からないけど、
どうしても、
夢の中で恋をしたあの御方と重ねてしまう。
真っ直ぐに私を見据える目。
私の名前を呼ぶ彼が、
きっと違うのに、
全然違うのに、
会いたくて、
彼をあの御方と重ねてしまう。
「……来ないで…お願い」
「どうして」
「…私は…
…あなたを知らない…」
彼は、私と初めて会った時から、
私を知っているように話す。
そして、その話し方も、
どこかあの御方に似ている。
だから、期待してしまう。
顔は全然違うけど、
中身はあの御方なのだと。
でもこれ以上、思い出したくない。
会いたくて、苦しくなるから。
だから、彼とも一緒にいたくない。
彼の全てが、
あの御方に見えてしまうから。

