玄関のドアが閉まる音が聞こえ、恐る恐る両手を耳から離すと 隣の部屋からガラスの破片を拾って後片付けをする音が聞こえ、私は部屋から出て行ったのが父親だと分かり、布団から出た。 「…あ、ごめんね尚美。 起こしちゃったわね…」 「……。」 アザだらけの顔で、ニッコリと微笑む母親。 私が見た、母親の最後の笑顔。 「お父さんすぐ帰って来るかも知れないから、部屋に戻ってなさい」 「……。」 そう言って私の頭を優しく撫でた母親は、酒乱の父親に耐えられず、この日を境に、私を残して蒸発した。