「右手と右足がブレーキで、左手はクラッチだから、ブレーキと間違えるなよ。
ギアは左足」
「わかってますー、それくらい」
千春の説明を受け、ひみ子はCBにまたがり、エンジンを掛けた。
「千秋、後ろに乗ってやんなよ」
「…え、私?」
「大丈夫だって、
どうせ発進できないだろうから」
「なら、千春が乗れよ…」
「いや、私は後ろから見てアドバイスするの得意だから」
「…なんじゃそりゃ」
単車はアクセルを回しただけでは、発進する事は出来ず、
左手でクラッチを握りながら、エンジンの回転数に合わせ、単車によって異なるアクセルの微妙な加減をしながらクラッチを繋ぐ技術が必要な為、初心者は発進する事もままならない。
「…ええっと、
まずは、何だっけ」
「クラッチ握ったまま、一速に入れる」
ひみ子の後ろに乗った私が、後ろからひみ子に手順を教えた。
「一速って、下だよね?」
「下から順に、1速、ニュートラ、2速、3速」
「えいっ」
ひみ子はガチッとギアを踏み、一速に入れた。
「まだクラッチ離すなよ。
アクセル回したまま、ゆっくり少しずつ離せ」
「ゆっくり…ゆっくり…」
アクセルを回しすぎ、エデンに広がる、無駄にデカいCBの音。
ひみ子は余分にアクセルを回しながら、ゆっくりとクラッチを繋いだ。
すると、
「はい、残念」
あえなくエンスト。
「もっかいやるー」
「ギアをニュートラルに入れ直しましょう。
一速と二速の中間だから、半分だけ軽く上げる」
「…よいしょ‥‥
あっ、行き過ぎた…」
ひみ子はギアを入れ直し、再び挑戦した。



