ともしび~紫の永友










―中国人の父親、ちょっと頭がおかしい人でさ、急に暴れたり暴力を振るう人間だったの。


母親は結婚してから数年間、父のそんな部分を知らずに生活していたから、突然、自分に暴力が向けられて恐怖を感じたんだろうね。


私を置いて、日本に逃げ帰ったの、

私が9才の時に。


もちろん、落ち着いたら迎えに来てくれるつもりだったみたいだけど。




―え、じゃあ…そっから美帆さんは、その暴力オヤジと2人きりに…




―ううん、2人で過ごしたのは数ヶ月だけ。


売り飛ばされたから、私。

ニューヨークに。




―売り飛ばされたー!?




―日本じゃ驚く様な話よね。

でも、貧しい地域では、そこまで珍しい話じゃない。


観光ビザで入国させられて、私を買った白人の金持ちの男が、お前は不法滞在者だから、警察に行けば逮捕されるぞって、10才の私を脅迫するの。


バカみたいな話よね、私が逃げようって気を起こさない為の陳腐な嘘を、本気で信用しちゃってたの、あの頃の私。




―……。










予想もしていなかった凄い話に、私は手に持ったカップを口元に運ぶ事を忘れていた。