咲希が漢字を直していると、久恵が私に催促してきた。
「はい、千秋の番」
「ええ…なんだろ。
マンツーマン・ディフェンスとかは?」
「バカにしてんのか、千秋。
大事なチーム名だぞ」
「ロサンゼルス・ブルズに言われたくねえよ…
どんだけインター・ナショナルな暴走族なんだ」
「もっとコンパクトな名前にしろ」
「…コンパクトねえ。
んじゃ、ウチらが最も強かった、第1クォーター」
「いや、千秋だけは第4だろ。
ウチらは後半サボるから弱いけど、千秋たまに覚醒してたじゃん。
チームがピンチになると」
「ああ、あったねえ。
全国行った時も、負けそうになった瞬間、ちーちゃん大暴走したよね」
ひみ子がそう言うと、当時を思い出してか、千春がクスッと笑いながら言った。
「後半、残り2分40秒。
咲希が左肩脱臼で下がった上、久恵が5ファール退場になって、絶望の9点差。
スリーが無いミニバスで、よく逆転出来たよな。
スーパー個人プレイだったけど」
「あんなに焦った試合、初めてだったからね。
なんか、初めて負けを意識した瞬間、急に怖くなって、無我夢中だった」
「もはや闘牛だったよ、
ボールとリングしか見えてない牛。
暇だったもん、ウチら」
「うん、ちーちゃん1人で戦うから、私達、観客になってた」
「あはは、ごめんごめん」



